たくどんの山歩き便り

ガチとまではいかない山歩きを発信します

唐松岳(長野県北安曇郡白馬村・富山県黒部市、標高2695メートル)を登る

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行程の概要

【移動標高】1510メートル→2696メートル(差1186メートル)

【山行時間】7時間41分

【移動距離】14.14キロメートル(GPS)計測(下山時、1キロほどリフトを使用)

【天気】晴れときどき曇り


山の魅力を幾度となく想起させる北アルプスの一座「唐松岳

山を見惚れるがために、登りたい山。

唐松岳はそんな形容がしっくりくる山の一つだろう。

北アルプス初登攀の一座によく薦められるだけあって、アルプス登山を十二分に満喫できる愉快な山だ。

技術的にも体力的にも難易度はそれほど高くない。

遠くの山々を眺め、足元の花々に目をやりながらゆっくり登山できる。

八方池の水鏡に映る絶景から始まり、真夏に残る雪渓、頂上からの360度にわたる景色、そして愛くるしい雷鳥との出合い…

幾度となく訪れる人が多い訳がよく分かる。

まずはウォーミングアップがてら黒菱駐車場から八方池山荘まで

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駐車場から八方池山荘までの道中も北アルプス雄大な景色が見られる

今回の山行の出発地点は、黒菱駐車場だ。

標高1500メートル地点まで、車で上がることができる。

黒菱ラインリフトの発着地点だ。

ここから1本のリフトで黒菱平へ、もう1本乗り継いで、八方池の玄関口「八方池山荘」へ至る。

リフト運行前から登る計画のため、登りはリフトを使わず、自力で登った。

黒菱平までは距離にして700メートルだが、その間に高度を200メートル稼がなければならない。結構しんどい。


8月の太陽は、日の出とともに、容赦ない熱光線を発してくる。

ただひんやりとした空気がせめてもの救いだ。

風が暑さをかき消してくれる。

歩いていると遠くに(といっても感覚的には近いのだが)、壮大な北アルプスの峰々が顔を出す。

北アルプスに古馴染みのような親近感を覚える。

黒菱平は、黒菱アルペンラインと、八方駅からゴンドラとリフトを乗り継ぐ八方アルペンラインとの接合点となる。

湿原の中には木道が据えられ、それほど広くもないため簡単に周遊できる。

いろいろな植物が植生している。

帰りに植物の絵を書いている人を見かけた。

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八方池山荘はリフトの終着駅

ここから八方池山荘までは900メートル。

序盤は斜面をジグザグと登り、次第に勾配は緩くなっていく。

八方池山荘はリフトの終着点で、ここから先、八方池までは自分の足で向かう。

自販機が目についた。

ジュース、お茶、そしてビールが並ぶ。

売店ではソフトクリームが売られているが、まだ開店前だった。

下山時に楽しみたい。

いざ、八方尾根をつたって八方池へ

八方池山荘で一息つき、八方池を目指す。

70代後半とおぼしき女性に「リフトで登ってきたの?」と尋ねられた。

駐車場からと伝えると、自身も下から登ってきたと話してくれた。

体力が有り余っているとは到底思えないその女性は、トレッキングポール一本で、ゆっくりと一歩一歩、登ってきたのだ。

これから出会う素敵な花々や景色に、心動かされる瞬間を心待ちにしているようだった。

どうか、お気をつけて。


山荘から八方池までは時間にして約1時間10分。

澄み切った空のもと木道を進む。

雲も近くなってきた。

なだらかな木道は、左側通行だ。

朝はまだ下山する登山者や観光客がいないため、すれ違うことはないが、混んでくると頻繁にすれ違うことになる。

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木道は滑り止めのため、凸凹に加工されていた

雨天時は気をつけたい。

八方池までの登山道は多様な植物を見ることができる。

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登山道横に自生する高山植物たち

植物が生えている場所には、その植物の説明書きが設置してある。

名前、科目、花期、名前の由来などの簡単な説明だが、

名前すら知らなかった植物の名を知るだけで、その植物がこの山行の思い出の一部になっていく。

木道脇には8月の真夏にも関わらず、まだ雪が残っていた。

すべての季節がそこにはあった。

第二ケルン手前には公衆トイレがある。

登山道にあるとは思えないほど、きれいに清掃されていた。

しかも水洗で、無料だ。

ほんの心ばかりの寄付をさせていただいた。

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第二ケルン、標高は2000メートルを超えた

公衆トイレを過ぎると木道は終わり、ここからはザレ場、ガレ場となる。

第二ケルンは、以前この場所で遭難した息子の慰霊と、今後このような悲劇が起こらないようにと、父親らが立てたという。

道迷いしやすい登山道だったらしい。

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終始、北アルプスの雄姿を拝める
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振り返っても絶景

第二ケルンから八方ケルンまでは距離にして200メートル、八方池まではあと少しだ。

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八方ケルン

八方池に下りていく道と第三ケルンに向かう分岐があり、右手に進み八方池を目指す。

八方池が見えてきた。

八方池の静謐なキャンバスに、群青の空と白く煙る雲、そしてアルプスの峻厳な山容が、見事に映り込む絶景。

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言葉はいらない
この景色を見るために、多くの登山者と観光客が訪れる。

恵まれたことに、まだリフトが動き出す前で、八方池のこの景色を独り占めである。

風もない。水鏡を撮影できた。

これだけで、今回の山行の満足ゲージは満タンである。

思ったより八方池は小ぶりに感じたが、フレームにおさめると威力が半端ない。

地球バンザイ。


扇雪渓から丸山ケルン、そして山頂へ

20〜30分ほど八方池にいただろうか。

八方池をあとにすると、ここから本格的な登山道となる。

登山装備が必要だという但書もある。

ガレ場が続き、左側は崖だ。

ここまで木というものがほとんどなかった気がするが、

標高2150メートルに到達すると、ダケカンバが混じる広葉樹林の中に入っていく。

下ノ樺だ。

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ダケカンバの樹林帯の中にも高山植物

登山道は分かりやすい。

高山植物が花を咲かせている。

時折、トラバースしながら高度を徐々に上げていく。

少し疲れが出てきた。

唐松岳頂上山荘のテント場に宿泊されたであろう登山者と、よくすれ違うようになってきた。

上ノ樺を抜けると、八方池からおよそ1時間で、扇雪渓へ。

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天然クーラーに多くの人があたっていた

雪渓からの冷気に、汗ばむ体が喜ぶ。

平坦な広い場所で、多くの登山客が腰を下ろして休んでいた。

扇雪渓から樹林帯の中をジグザグと進み、標高を上げていく。

丸山ケルンまで15分ほどの道のりだ。

ここいらからチングルマがよく咲いている。

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チングルマの群生が目につく

5枚の花片が桜のように開き、可愛らしい。

時折、雪渓も目に入る。

丸山ケルンでひと休みする。

あいにく、ガスっていて景色はなかったが、清々しい風にあたってクールダウン。

ぼーっと、ほっとできるいい場所だ。

ここから頂上までの道はザレ場で、石車に乗って転ばないよう慎重に登る。

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ザレ場、ガレ場を慎重に登っていく

左側は崖もあり、足を滑らせたら、結構な距離を落ちることになりそうだ。

岩場も多い。

ロープが設置されている箇所もある。

ヘルメットを装着している登山者もちらほら見かける。


ピークに到着も…

丸山ケルンから50分かけて、唐松岳頂上山荘手前の広場まで来た。

見通しがよければここから唐松岳頂上が見えるはずだったが、ガスっていて10メートル先も見えない。

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かすかに見える唐松岳頂上山荘

頂上山荘も見えない。

景色も見えない。

とりあえずピークハント。

頂上まで20分だが、ガレ場、岩場で歩きづらさがある。

休み休み、景色も見れずに頂上を目指す。

頂上には何人もの人が、視界が開けるのを今か今かと待ち構えていた。

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周りは真っ白

一向に晴れる気配がない。

頂上から、思いっきりアルプスの山々を見られるはずだった。

10分ぐらい座っていただろうか。

帰途につこうと腰を上げ、帰ろうとした時、ようやく南西方面の景色が開けた。

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ようやく景色がひろがった
何枚か写真におさめた。

唐松岳は山を眺めるために登る山と言える。

帰りに頂上山荘前から見た唐松岳の山容も美麗だった。

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唐松岳の山頂を頂上山荘前から望む

初めてのご対面

そして、もう一つの思い出が。

雷鳥の親子に出会えたことだ。

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雷鳥の親子のワンシーンに感動

お菓子のパッケージの絵と映像以外では、見ることがなかった野生の雷鳥である。

母鳥とひな鳥の親子。

ひな鳥は好奇心を抑えきれずに、あちこちと歩き回る。

母鳥はひな鳥を頭をあげて見守り、そして時折、鳴く。

「あまり遠くへいかないで、こっちへおいで」と。

それでもひな鳥はおかまいなし。

どんどん好奇心にまかせて歩き回る。

母鳥は心配して、そのあとを追いかける。

そうした親子劇場が5分くらい続いただろうか。

5分足らずだったが、とても愛くるしいシーンだった。

満足ゲージが満杯を超え、溢れ出た瞬間だった。

では、ここいらで。


黒姫山(長野県上水内郡信濃町、標高2053メートル)を登る

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行程の概要

【移動標高】1140メートル→2053メートル(差913メートル)

【山行時間】6時間27分

【移動距離】13.65キロメートル(GPS)計測

【天気】曇のちうっすら晴れ

 

緑色に包まれて歩く癒やしの山行「黒姫山

黒姫伝説に語られるその山容は信濃の"フジヤマ"

長野県北信地方に伝わる「黒姫伝説」という民話をご存知だろうか。
美しい黒姫に、龍蛇が求婚し、云々という物語だ。
いく通りかの物語が存在するが、話の詳細は他に譲ることにしたい。

黒姫山の山容は、裾野が広く富士山のような形から、安曇野市有明山と並び、信濃のフジヤマと称される(静岡県公式ホームページの全国ふるさと富士に紹介されている)。

 一つ目の池「種池」

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(左)登山口前の駐車場(4、5台のスペース)(右)ぬかるむ登山道

山行を開始しよう。
今回の出発地点は西新道登山口とした。
歩き始めは笹薮に囲まれた平坦な道を進む。
前日の雨で、道がぬかるむ。所々に木が渡されているところを見ると、おそらく雨が降らなくても、ぬかるむ道なのだろう。
標高1000メートルを超えるが、前回の飯縄山と同様、背丈が2メートルはある、笹に囲まれた登山道は、熱(いき)れた空気が漂っていた。

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静寂な種池

登山口から10分ほど進むと、「種池」に向かう枝道の分岐に着く。
そこから1〜2分歩けば種池だ。
名の由来は、池の水を汲んで戸隠神社に雨乞いをすると、雨が降るから。
雨の"種"となる池ということらしい。
森に囲まれた池には水草が茂り、静けさが際立っていた。

 

物音はごめんだ 

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広葉樹と笹に囲まれた登山道をゆく

本線に戻り、広葉樹と笹薮の中にできた登山道を辿っていく。
終始、登山道の周りを笹が取り囲んでいる。
少しでも物音がしようものなら、ひょっこり熊さんが眼の前に顔を出すのではないかと、気が気ではない。
自然音だけの山中に、これでもかと言わんばかりに、熊よけの鈴を大きめに鳴らすよう努めた。
動物園以外では、互いに遭いたくない間柄なのだから、「いますよ!」というアピールはマナーだ。

二つ目の池「古池」

次に出くわした池は「古池」という。
池の一部分はコンクリートで補強されていた。
池の周りを一周できるようだが、今回は時計回りに半周で済ます。
水面がほぼ揺れることはなく、山を映し出している。
ただ、空が雲に覆われていて光量が少なく、水面のキャンパスはどこかぼんやりしていた。

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カルガモにあった古池

池の風景を写真におさめていると、水面から急に"ぬうっ"と首が出てきた。
思わず「おっ!」と声が漏れる。
正体はカルガモだった。
あちらも驚いたのか、水面に出した頭をすぐに水中に引っ込め、5秒ほど潜水したあと、再び頭を出して、今度は逃げるように池の向こうへと飛び立っていった。
生き物同士、仲良くしましょう。

池の周りを6時方向から時計回りに11時方向まで進むと、苔の衣をまとった小さな祠があった。

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苔生す祠

なんとなく近寄りがたい雰囲気だ。遠くからズームで写真におさめるだけに留める。
自然は、人の手が届かなくなると、その場所を急速に自然へと回収していくパワーがある。

 

森林セラピーにもってこいの登山道

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癒やしの森

池を抜けると、ここから登山道らしい登りが始まる。
沢の流れる音とウグイスの鳴き声が響き渡る。
ブナなどの広葉樹林の中を歩くいていると、リラックスできる。
歩くスピードも、この中を満喫するようにゆっくりになってしまう。
自分を広葉樹が受け入れてくれるような気がする。
針葉樹林の中では、葉の形よろしく、刺々しさを感じ、急き立てられるようにせっせと歩が進む。
針葉樹が仁王様なら、広葉樹は観音様の雰囲気だ。

丸太を渡した沢を一度だけ渡ることになる。
緑の中、清水(せいすい)が苔生す石にぶつかりながら、柔らかく自然に流れていく。
登山道中、マイナスイオンをもっとも浴びることができる森林セラピースポットだ。

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マイナスイオンを存分に

ブナ林の中、歩をすすめる。
登山道は飯縄山よりは歩きづらい。
木の根の露出が多く、この日は地面が濡れていたためよく滑る。
登りはまだましだったが、下山時はしょっちゅう滑って転びそうになった。
トレッキングポールは必携だ。

 

自然の恵みで作られる伝統工芸品

登り始めること2時間、標高1,485メートルの「新道分岐」に着いた。
「戸隠竹細工の森」の木標が建っている。
この地域の伝統工芸品で、原料はチシマザサだ。
長野ではネマガリダケという。
ここまで通ってきた登山道を囲んでいたのが、この笹である。

ここから先、大きめの黒っぽい石が目立ち始めた。
分岐から30分かけて標高200メートルを登ると「しなの木」に到着する。

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自然の恵みから作る(左…竹細工の木標、右…丸太のベンチ)

広場になっていて、丸太のベンチが据えられている。
腰を下ろし、水分補給を兼ねて休憩した。
少しずつ光が強くなって、登山道が明るくなってきた。
頂上に着く頃には曇り空から青空に変わってほしい。

眺望を期待して

「しなの木」で10分弱休憩し、再出発。
ここから「姫見分」まで、登山道一の急登が続く。

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木の新根を発見

尾根道だが、眺望はない。
足をひっかけないように、頭をぶつけないように、四方八方に気を配りながら登っていく。
ひたすら登ること標高220メートル、距離にして700メートル。
「姫見分」に着くと、ここから先は頂上直下まで平坦な稜線歩きが楽しめる。

「しらたま平」で、この山行初の展望が開ける。はずだった。
眼前にはまだ雲が残っていて、眺望がほとんどない。
そこに景色があるものとイメージし、遠くを眺め、深呼吸してみる。
雲は吸い込めやしないし、吹き飛ばすこともできない。
足元には白玉というより、黒玉の石や岩がごろついている。
風が吹く。飯縄山では味わえなかった、良質な涼風だ。

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風に〜吹かれて〜♪

 

足元の景色を眺めながら頂上へ

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頂上まで稜線歩き

頂上にかけて眺めが良くなることを祈って、「しらたま平」を後にする。
稜線の登山道には、進むごとに色や形が異なる花たちが咲いている。
概して主張が少ない花たちだが、目立つ。
人の手が加えられずに野に咲いているという点で、なにか特別感がある。
野生児的な魅力だ。

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(左)ハナニガナ(右)コバノイチヤクソウ

そんなこんなで、「しらたま平」から「峰ノ大池分岐」まではゆっくりと歩いて20分くらいだ。
ここから頂上まで、段差を超えるのに苦労する岩稜帯を80メートルほど登る。
「頂上まで後少し」と思い、「しんどいなぁ」と思い、そして無心となって、その堂々巡りを繰り返しているうちに、黒姫山頂上へ到着した。
頂上周辺は、20人、30人が優に居られるだけのスペースがある。ただ、30人いては密になりすぎるが。


 

頂上でわずかな青空がそっと現れた

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頂上に到着

頂上標は鉄製の四角い看板だった。
頂上から360度に見える山々が記してある。
そして岩の上には小さな祠が建っている。
遠くを見渡せるほどに、雲は消えてくれなかった。
飯縄山から引き続き、梅雨前線に景色を阻まれた。無念。

ただし、日陰というものがないため、一度太陽が照ると、カーボンヒータにあたってるようにすぐに熱くなる。
あまり長居出来そうにない。

飯縄山もそうだったが、蝿が大量に飛んでいる。
天狗岩にもそういや大量にいた。
彼らの目的は不勉強で知らないが、ただ鬱陶しいと思うだけだ。蝿たちよ、わがまま言って、失敬。

頂上には約30分滞在した。
卵ロールとおにぎり、そしてスイートポテトでエネルギーを補給する。
少しだけ日が差し込み、雲間に夏の青い空が見えた。
雲ひとつない真っ青な完璧な空は、それはそれで清々しい心地よさを感じるが、雲間からわずかに見える空には、ほっとする暖かさがある。

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少しの青空に癒やされる

 

今回、峰ノ大池に立ち寄るのはお預けとし、登ってきた道を戻る。
下山時、何組かの登山者とお会いした。
彼ら彼女らは展望を望めただろうか。

黒姫山は森林浴に適した山、まさに"The 森"。

では、ここいらで。

飯縄山(長野県長野市、標高1917メートル)を登る

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行程の概要

【移動標高】1225メートル→1917メートル(差692メートル)

【山行時間】3時間38分

【移動距離】7.92キロメートル(GPS)計測

【天気】曇時々晴れ


 

日本二百名山と北信五岳に名を連ねる山岳信仰の霊山「飯縄山

一気に自然モードに

車の扉を開けて外に出た途端、森に漂う土と木々の香りが臭覚を刺激する。日常モードは鳴りを潜め、こころとからだが自然満喫モードへと切り替わっていく。

飯縄山への登山道はいくつかあるが、今回は西側から登ることにした。もっともポピュラーな一ノ鳥居登山口からのコースと、最終的には頂上手前で合流することになる。

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下り立ったらすぐに自然満喫モードに


登山口は、子どもが忍者になりきって、一日中過ごせる「チビッ子忍者村」(大人でも忍者になりきったって、白い目で見られることはほぼない、素敵な空間だ。以前、大人として入村した経験がある)から林道を少し入ったところにある。

駐車スペースは林道の路肩。縦列駐車でとめる。木々の匂い、近くを流れる沢の音、鳥の鳴き声が五感を刺激する。登山口から崩れかけの階段を登ると、平坦な登山道へと続く。ここから萱ノ宮までは歩きやすい登山道だ。道幅は2メートルほどで、踏みかためられた地面を、枯れ葉と折れ枝が覆う。

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鳥の声が響く森のトンネルを登る

 

暑いのも登山のうち

登山口から萱ノ宮までは時間にして30分ほど、距離にして約1.5キロメートルだ。鳥居には、しめ縄がかけられ、紙垂(しで)が垂れ下がっていた。いっこうに紙垂が揺れない。どうりで暑くて、大量に汗をかくはずだ。ストレスなくバドミントンができるほど、まったく無風で、天然の冷風機が機能していない。

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萱ノ宮に参拝し安全祈願

鳥居をくぐり、左側にある社を詣で、水分補給をして出発する。ここから、少しずつ登山道に石が現れ、標高が上がるに連れて岩へと変化していく。ウグイスのさえずりと谷渡りの声が、遠くの方からこだまする。傾斜が少しずつきつくなってきた。段差もある。地面からむき出した木の根が、足をすくおうとする。

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徐々に段差が出てくる

登ること1時間15分。樹林帯を抜け、東側、南側の展望が開ける箇所に出た。この時はまだ、もやが視界を遮り、景色を眺めることはできなかった。北の方角を見上げると、飯縄山の南峰が「への字」の形に顔を出している。登山道を覆うような木々がなく、周りは笹薮だ。光が少しずつ差し込みはじめ、地面からの熱(いき)れが体にまとわりつく。白と黄の小さな花が、道横に所々咲いている。

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ハナアブが9枚の花びらの中に顔をうづめていた
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 仏像に神社、そして頂上へ

むっとする熱気の中、うなだれながら歩を進める。少し登り、平坦な道を150メートルほど進むと、森の中へ再び入る。前日の雨でぬかるむ道の中、できるだけぬかるみが少ない場所を選びながら進む。森の中を出て、ほんのわずかで一ノ鳥居登山口からのコースとぶつかる。

登山道横に石仏が見えた。謙虚すぎるほど謙虚な、控えめな登場だ。気づかれなくても、そっと登山者を見守っているようだった。頂上まではそこから20分ほど。坂を登り切ると、飯縄神社がある南峰に着く。社の中には天狗の絵が飾られていた。神社を背に、長野市内の景色が一望できるはずだったが、ここでもまだ雲が邪魔をする。参拝した後、アップダウンがほとんどない登山道を10分かけて頂上を目指す。

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霊山を垣間見る(左…石仏、右…飯縄神社)

登り始めて2時間、登頂だ。少しだけ雲が退き、初夏の青い空が見えたが、それも一瞬だった。街並みの景色は一向に見えない。山々も見えない。とりあえず腰をおろして休憩する。今日のおやつは、さきイカにしてみた。汗で失った塩分が補給されていく。軽いし、おやつに乾物はありだな。

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景色が見えない…少しだけ雲の隙間から青空が

 

虫との戯れ

頂上はやたらと虫が多い。飛ぶもの、這うもの、そしてまとわりつくもの。無視できない。一匹の背が黄緑の、コガネらしき昆虫が手の上に乗ってきた。片方の手の指を近づけると、その指にまた乗ってくる。本人にとっては進んでいるつもりでも、一向に景色は変わらないはずだ。指のルームランナー上を走っているようなものだ。しばし、昆虫と遊んだ。

20分ほど頂上に滞在し、1時間20分かけて下山した。帰りにも何組かの登山者とすれ違った。貴重な梅雨の合間を見つけ、みんなやってきたのだ。少しでも日常を抜けて、そして自然を求めて。

では、ここいらで。

岩菅山・裏岩菅山(長野県下高井郡山ノ内町、標高2295メートル・2341メートル)を登る

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行程の概要

【移動標高】1580メートル→2341メートル(差761メートル)

【山行時間】6時間50分

【移動距離】12.36キロメートル(GPS)計測

【天気】曇時々晴れ

 


 

 

貴重な原生林が残る日本二百名山の一座

ちょっとしたリベンジのために

標高2,000メートル以下の山行が、暑くて厳しくなってきた6月下旬、志賀高原の岩菅山と裏岩菅山を目指す。

昨年、岩菅山には登頂を果たすも、道半ばで下山した。

裏岩菅山まで縦走しようと計画していたが、インスタントラーメンを山頂で食べている最中、南東方向の空が急に暗くなって雷鳴が聴こえてきた。

急いでラーメンを胃に流し込み、雷鳴に焦りながら片付けを済まして、そそくさと下山した次第である。

山頂小屋で雨宿りすることもできたが、早めに帰宅の途につきたかったこともあって、仕方がなかった。

ということで、今回は裏岩菅山までどうしても行く計画である。

 

雨に濡れながらのスタート

甲信越地方は梅雨入りしたものの、その日の天気予報は晴れの予報だった。

しかし、志賀高原に向かう車中から見る空は曇り空。標高が高くなるにつれ、ますます視界が良くない。

登山口に到着したのは早朝5時頃。すでに6、7台の車が駐めてあった。

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霧雨の中スタート


駐車スペースは、路肩を含めると10、20台は駐められそうな広さだ。

スタート時点でも空は曇で覆われ、霧雨がただよっていた。

細かい雨が新緑の葉につき、風がそよぐとともに、その水滴が雨粒となって頭上に注ぐ。

霧雨が晴れれば濡れはしないと思ったが、念の為レインスーツのジャケットとスパッツを装着して歩き始める。

 

澄み切った小川に目をやり森林浴

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マイナスイオン雨あられの中を


小三郎小屋跡までは、木組みされた階段を登っていく。

木から降り落ちた雨が、登山道にぬかるみを作り、歩きづらい。

ステップを踏む場所を選んで歩を進めため、いつもより気を使って疲れる。

小三郎小屋跡に突き当たったら、左に進路をとる。

ここからアライタ沢出合まで、平坦な道が続く。

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ゆく小川の流れは絶えずして

進行方向の右側を、澄んだ小川が絶え間なく流れる。

水の流れになぜかワクワクする。淀まず、留まらず、さらさらと流れるあの感じが好きだ。

透明で透き通った流れを眺めながら、森林浴を続けるうちに、心身が緩み、だんだんとリラックスしていくのが分かる。

ただこの時期、虫たちの元気っぷりも見事なもので、正直鬱陶しく、その点はストレスだった。


 

♪熊さんに出会った♪ってならないように…

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涼し気な風景のアライタ沢

30分ほどでアライタ沢出合に着く。

ここまで辿ってきた小川は、この地点から分岐して小さな流れとなっている。

沢の流れは、小川と違って激しい。

真夏にここに佇めば、涼を得られること間違いなし。

天然のクーラーとはよく言ったものだ。

沢の流れでスイカでも冷やして、冷えたスイカを食べながら水の流れと鳥の声を聞く。

家の庭にでもこの空間を移設したい…。

妄想中の妄想だが、この妄想自体、至極まともなものだろう。

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登りが始まる

さて、沢にかかる木橋を渡ってから、登山道らしい登りが始まる。

まずは木組みの階段を登る。標高にして約80メートル登ると、ほぼ平坦な道が300メートルほど続く。

周りは笹薮、出会い頭に熊と出会うのは勘弁してもらいたい。

札幌市街に現れた熊と、自衛隊員が対峙する映像を思い出す。

熊よけの鈴を高らかに鳴らし、歩を進める。

普段からぬかるんでいる道なのか、木が据えられた箇所があった。

そのほかは、踏み固められてよく整備された登山道で、歩きやすく軽快に足を運ぶことができる。

つまづいたり、転んだりという心配もない。

 

目指す岩菅山頂上付近の山容が現れる

一旦平坦な道を抜けると、ここから先は一貫して登りだ。

広葉樹林帯の中を進む。もうこの頃には、霧雨はやみ、心拍が上がるにつれて汗ばんでくる。

この辺から登山道に露出した木の根が現れ、濡れていればスリップに注意。

下山時、見事にスリップして転倒した。幸い、ザックとトレッキングパンツが汚れた程度で済んだ。

アライタ沢出合を出発して50分ほどで岩菅山頂上までの中間地点。

看板が教えてくれる。ここからノッキリまでは尾根伝いに歩く。

登山道に少し大きめの石が現れ始めた。道幅も少しだけ狭い。

ノッキリまで残り約100メートル、北東方向、左側に岩菅山のきれいな山容(トップ写真)を確認できる。

登りでは見ることができなかったが、帰りに振り返って確認し写真を撮った。

 

見通しが開けた頂上までの道にこじんまり咲く花たち

ノッキリは寺子屋峰方面の登山道と交わる地点。休憩用のベンチが二脚ほどあった。

ここから先、頂上まではガレ場、ザレを行く。水分補給してGo!

意気込み虚しく、霧がかかって景色が望めない。

その代わり、道端に咲く高山植物に自然と目がいく。

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小さなベル型"ツガザクラ"

白に近いうすピンク色で、小さいベルのような花が連なるツガザクラ

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エバキスミレ(左)とハクサンイチゲ(右)

黄色く華奢な花冠を持つナエバキスミレ。

そして、桜のような5枚の白い花びらを凛と咲かせるハクサンイチゲ

どれも立ち止まって見てしまうほど、魅力的な花たちだ。

ところどころに咲く花に目をやりながら、重力に逆らって体を上へ上へと押し上げていく。

すぐに心拍が上がり、頂上はまだかと、何度となくマップに目をやる。


 

頂上からの展望は…

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祠(左)と山小屋(右)

ノッキリから20数分、標高220メートルを登りきり頂上に立つ。

景色は望めなかった。そんな中、まず目を引くのがしめ縄で結界がはられた、石の祠だ。山岳信仰の象徴そのもの。

頂上標は祠より少し裏岩菅山方面に離れたところに。

そして、山小屋は風を避けるためか、少しだけ低いところに建ててある。

壁は石造り、屋根は木でできているハイブリット型の建物だ。

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十畳以上はありそうだ

山頂には4〜5人のパーティーがすでにいた。

山小屋を拝見した際、部屋の空気が温まっていたところをみると、小屋に宿泊したようだ。

小屋の中には薪ストーブが据えられ、寝床部分は地面から30センチほど高くなっている。

2、3日泊まる分には何の不都合もない。 

裏岩菅山に向けて稜線歩き、そして5分間だけの景色

岩菅山頂上をうろうろして、15分ほど滞在しただろうか。

前回、行くことができなかった裏岩菅山を目指す。

岩菅山との標高差は50メートルもないが、裏岩菅山に至る道はアップダウンがある。

こういう時いつも、"せっかく登ったのに"と心の中でつぶやいてしまう。

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一向に霧が晴れる気配はない。イノシシの足跡スタンプ発見

今のところ、景色もさほど望めない。

霧が晴れていれば、遠くまで稜線が見渡せるはずだが無念。

ぬかるみ気味の道を進む。

40分ほど歩き、裏岩菅山に到着。

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裏岩菅山初登頂

薄着だと若干肌寒い。未だ天候はよくならず、景色が見えない。

ここでは50分ほど滞在し、栄養補給を行う。

食べ物を口に運びながら、雲が消えるのを待つ。

そしたら、ほんの5分ほどだったが、下界の景色が急に見えはじめ、青空も出てきた。

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ほんの5分間だけの景色

遠くにはアルプスまでも望むことができた。

たった5分だったが、この5分があるかないかでこの山行の印象は大きく違っていたに違いない。

一瞬だからこそ、印象に残るとも言える。

下山時にも多くの登山客とすれ違う。

決して天気は良いとは言えない日だったが、二百名山の名の通り、多くの人に親しまれている山だ。

トレッキングシューズは必要だが、登山初心者でも登れるだろうし、登山の魅力を十分味わうことができる良質な山と言えよう。

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また訪れたいと思えた二百名山の山行だった

今度こそ快晴の日に。

では、ここで。

毛無山(長野県下高井郡野沢温泉村、標高1650メートル)を登る

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行程の概要

【移動標高】1407メートル→1650メートル(差243メートル)

【山行時間】1時間28分

【移動距離】3.4キロメートル(GPS)計測

【天気】曇のち雨


 

神秘の花「サンカヨウ」を愛でる登山

雪が無いゲレンデを登る

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頂上までゲレンデをひたすら登っていく

野沢温泉村には、観光スポットで知られる麻釜(「おがま」という。高温の温泉が湧き出る)の見物や、良質な温泉へ浸かりに来たことはあったが、山を登りに来たのは初めて。

今回は、村内の最高峰「毛無山」に咲く花「サンカヨウ」を探しにきた。

野沢温泉村側から奥志賀高原栄線を辿って、長坂ゴンドラやまびこ駅に到着。ここが登山口となる。

登山口に着いたのは7時頃。天気が良くなる兆しはない。

曇り空と霧の中、山行を開始した。

山頂までは、基本的に草が生い茂るゲレンデの中を登っていく。

ずっと登り坂。スキー場だから当然だが、木陰らしい木陰もなく、晴天の日ならば、暑くてきついだろう。

山頂からの景色を想像してみる

20分ほど登っただろうか。ゴンドラの終着駅が見えてきた。霧はまだ立ち込めたままで、まったくといっていいほど遠くは見通せない。
雪がない緑のスキー場は、なんだかもの寂しさがあったが、一方で霧のせいか雰囲気もある。
終着駅から10分ほどで頂上に到着。頂上には頂上標らしいものはなかった。

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曇天と霧で景色は望めなかった

展望スペースを備えた建物があったので入ってみる。

階段を登りきったところに、扉があり、開けると3畳ほどの避難スペースがある。

もう1つ奥の扉の向こうが展望スペースだ。

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窓がなく飛降できるが厳禁

でかでかと赤字で書かれた「飛降厳禁」の文字が目を引く。

意気込んで飛降する人が後を絶たなかったのか…。

このときもまだあたりは霧が立ち込めたままで、まったく展望はなかった。

晴れていれば見えたであろう山々を、窓際の壁の上に描かれた展望図を見ながらイメージする。

描かれていた山の中には、登ったことがある山も多かった。


 

サンカヨウ」を発見

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花言葉は"親愛の情" "幸せ" "自由奔放"

下山時も、原っぱのゲレンデを登山靴で下っていく。頂上から10分ほど下ったところに、「サンカヨウ」が自生していた。「サンカヨウ」の花びらは、水で濡れると透き通って見える珍しい花。このときは朝露が花びらを少しだけ濡らし、微妙に透き通った花びらを見ることができた。だいだい十前後の花冠が集まって咲き、一つ一つの花冠は小さくてかわいい。飽きることなく10分ほど見ていたが、雨が強く降り出したので、その場を後にする。

この時期にしか見られない「サンカヨウ」を愛でることはできた。ただ、きれいな景色もあわせて眺めたかった。次回は透明な白い花とクリアブルーの空、そして鮮やかな緑を一辺に見られるタイミングで来てみたい。

では、ここで。

 

天狗岩・金松寺山(長野県松本市、標高1964メートル、1625メートル)を登る

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行程の概要

【移動標高】797メートル→1964メートル(差1167メートル)

【山行時間】6時間17分

【移動距離】13.72キロメートル(GPS)計測

【天気】曇り時々晴れ


 

天狗の気分で松本平を望む

林道を登山口まで

もうそろそろ、標高2000メートルに満たない山への山行は、暑くてたまらない。その前にと、松本市の天狗岩・金松寺山へと出かけた。

松本梓川地区の登山口へと車を走らせると、途中ゲートがあり、車でいけるのはここまで。4~5台分の駐車スペースがある。

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自然界との境界を思わせる小さな祠

ゲートを超えると、初夏の青々とした樹木に、太陽の光がさえぎられた林道が続く。

薄暗い中を少し歩くと、一本の大木の根元に小さな祠が祭られている。

森厳とした中にたたずむその祠が、ここまでは人間界で、ここから先は自然界だと告げているようだ。

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自然の音を聞きながら登山口を目指す

林道を歩くこと40分、右側前方に登山口が見えてくる。

林道自体はいたって普通の緩い登山道だが、樹木のにおいを嗅ぎ、緑に目をやり、鳥のさえずりと沢の流れに耳を傾けるだけで、非日常感満載だ。

気分は上々。

とにかくジグザグと登る

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歩きやすい登山道をてくてくと

登山道は、岩や石もほとんどなく、木の根の露出もないため、歩きやすい。

カラマツやスギなどの樹木の中を、山登りらしくジグザグと登っていく。

うつむきながら歩を進め、時折顔を上げては、新緑の隙間からわずかに見える空を見上げる。

たまには、トレーニングのつもりで、一気呵成に坂を駆け上がる。

そうこうしているうちに、金松寺山頂上への東側の分岐に到着。

ここまでおよそ2時間20分、腰を下ろし10分ほど休憩した。

頂上手前は急登

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可憐なツマトリソウ

金松寺山へは帰りによることにし、とりあえずは天狗岩を目指す。

金松寺山の北側を巻くように、平坦な道を進む。

金松寺山の西側の分岐まで来るとそこは尾根。

そこから500メートルほど登ると一旦は平坦な道になるが、そこをすぎると頂上までは急坂を登る。

太陽の日差しを遮ってくれる木がないため、暑くて、疲れる。


 

天狗岩に腰掛けて松本平を望む

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小さな街並みが自分を大きな存在に錯覚させる

登り切ってから、両側が笹に覆われた平坦な道を少し進むと、左側に展望が良さそうな岩場が現れる。そこが天狗岩。

岩の先へと進むごとに、視界がどんどん開けてくる。眺めがよい。

岩に腰掛け、下界を見下ろしていると、天狗のような気分になる。

遠くまでは見通せなかったが、乗鞍岳と御岳山は確認できた。天気が良ければ、富士山まで望めるそうだ。

こういう風に眼下に街並みを見下ろしていると、街より自分の方が大きな存在に感じられてくる。

同じ様に、宇宙旅行に出かけ、宇宙から地球を見たとしてら、「わりと地球は小ぶりだな」と思う気がする。普段では考えもしないことまで考えてしまうのが、山登りの魅力だな。

帰りによった金松寺山の頂上は展望はなし。ハエに襲撃されただけで、そそくさと下山させてもらった。

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帰りに野生の猿たちに遭遇

最後に最高の展望というご褒美が待っている天狗岩の登山だった。

では。

風吹岳(長野県小谷村、標高1888メートル)を登る

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行程の概要

【移動標高】923メートル→1888メートル(差965メートル)

【山行時間】8時間45分

【移動距離】15.73キロメートル(GPS)計測

【天気】曇り→小雨→晴れ、微風

日帰りで登る、初夏と春と冬が共存する北アルプス峰へ

風吹登山口まで車では入れず…

5月末、北アルプスの一座、風吹岳を登る。

北登山口から風吹岳山頂までは4キロほど。

計画では、登山口までは車で行けるはずだった。

順調に林道を車で進んでいたが、登山口手前、3キロメートルのところで立ち往生してしまった。

土砂崩れと倒木だ。

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倒木でここから先は車でいけず…

3メートルほど垂直方向にジャンプできる車体(バットマンカー並のポテンシャルが必要だ)じゃないと、到底突き進むことはできない。

少し車をバックして、適当な路肩スペースを見つけ、そこを車のキャンプ地とした。

そこから北登山口までは、一旦下ってから登ることになった。

登山口に立って、初めて登山へのやる気みたいなものがみなぎってくるのに、山登りのスタート地点である登山口までの歩行は、なんとも言えない心持ちでダラダラと歩くことに。

それでも、5月の鮮やかな新緑に目をやり、渓流の音に耳を傾けているうちに、すこしずつテンションは回復していった。

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初夏を感じながら北登山口を目指す

登山開始、そして白い流れ

歩き始めて、1時間弱。

ようやく北登山口に到着だ。

登山口には、10台以上駐車できるスペースがある。

次来るときは、どうかバットマンカー級の車じゃなくても、ここまで来られますようにと切に願う。

 

フーっと一息ついて、ここからが山登りの本番だ。

落ち葉が敷き詰められた登山道は、足に優しい。

思えば、9時間近くの山行にも関わらず、この前鍬ノ峰を登った時よりも、筋肉痛の出具合は格段に軽い気がする。

落ち葉に隠れた木の根があるので、そこは注意は要する。

 

光に照らされて透き通った広葉樹の葉っぱの下を登ること20分、突如硫黄臭を感じる。温泉だ。

細めの道を進み、少し開けると、右下に白い川の流れが目に着く。

水しぶきが反射して白く見えるのではなく、おそらく温泉成分のせいだろう。

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神秘的な白い流れ

きれいな水に水芭蕉が咲く

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登山道が狭くなっているので慎重に進む

少し進むと、左側が崩れた箇所があった。ロープを補助的に使い、段差を上がる。

 

1300メートルを過ぎたあたりから、登山道に雪が現れた。

雪解け水で潤った湿地には、いくつか水芭蕉が白い花を咲かせていた。

純真無垢という表現が似合っている。

とにかく水がきれいなのだ。

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澄んだ雪解け水と水芭蕉

道に迷いそうになりながらも風吹山荘へ

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靄が出て道に迷いそうに…

残雪のせいか、登山道らしき形跡は見られず、何度か道を外れてしまった。

途中で靄があたりに立ち込めたことも原因だ。

頻繁に地図は確認すべき。

今はスマホさえあれば、GPSで自分の居場所を地図上ですぐに確認できるので、非常に心強い。

いずれGPSに頼らず、地図の読図で登れるようになりたい気もする。

 

風吹山荘までの最後の登りは、ほぼ雪の中を歩くことになった。

チェーンスパイクを持ってくるべきだった…

登山の山行中はなるべく後悔はしたくない。

次は準備万端にと誓う。

 

車を駐車したところから3時間40分で風吹山荘に到着。山小屋は3棟、そのうち1棟は管理棟のようだ。テント泊も可能だが、4張しか張れないらしい。トイレがあり、休憩できるベンチも設置されている。

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風吹山荘の営業はこれから

山小屋の周りは、まだ2メートルほどの雪が残っていて、ふきのとうや水芭蕉が自生している。そこから先は木道が敷かれていて、風吹大池を周遊することができる。池淵は、未だ凍っているようだ。テン泊して、早朝に池の周りを散策したら、どれだけ気持ちいいだろうか。

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冬の気配を残す風吹大池

登頂と北風大池の周遊

山荘から頂上までは20分ほど。わりと急な道をひたすら登っていく。

頂上には東屋があり、雨をしのいで休憩できる。北東方向に、木々の隙間から少しだけ展望があるくらいで、ほとんど景色は望めない。

 

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頂上からの展望と東屋

頂上で30分ほど休憩し、風吹大池まで下りて、反時計回りに周遊する。

雪で登山道を一度見失った。GPSを頼りに40メートルほど雪山を登って、登山道に戻る。

大池の西側には、科鉢池があるようだが、凍っていたのかよく確認できなかった。

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風吹大池の西側の風景

時計でいう7〜8時のところに、湿地帯が広がっている。眺めがいい。10分ほどかけて、木道に沿ってゆっくりと散策した。

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散策にもってこいの湿地帯

下山の頃には空がよく見え、日差しが戻り、暖かくなってきていた。雪道についているはずの往路のときの足跡は、溶けてもうなくなっていた。1時間半で登山口へ。そこからさらに1時間かかってようやく車にたどり着く。わりとくたくただ。

もう一度登ってみたいが…

今回は標高1000メートル弱を登ったことで、初夏、春、冬という季節のグラデーションを味わうことができた。紅葉を愛でに、もう一度秋に訪れたいが、林道の開通情報を確認してからにしようっと。

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初夏、春、冬を一度に味わう